「サラリーマン道」を生きている

2011.12.24

年功序列という限りなく閉じた世界での話になると、少々話が変わってくる。年功序列というレールからなかなか降りられず、人生のすべてを費やして、ただ前に進むしかなくなった人間は、本来の動機を喪失してしまいがちだ。たとえば、入社一年目の新入社員時代、同期でお酒を飲みにいくと、たいてい各自が担当する仕事の話が中心になる。まだ社会経験が少ない分、それぞれの仕事内容に興味津々なのだ。ところがこれが一〇年以上経つと、同じ面子で飲みにいっても、開違いなく話題の中心は“人事”の話だ。

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やれ誰それが課長になっただの、誰それは転職しただのといった話題が、下手をすると二時間近く続くことになる。なかには、「あいつが課長になったのが許せないから、俺は転職する」と言い出す人間まで出てくる始末だ。昔は多少なりとも抱いていた「〜をやりたい」という気持ちはすっかり影を潜めてしまっている。最初に持っていた動機が、いつのまにか働く(レールを進む)行為そのものへとすり替わっているのがよくわかるだろう。そう、これ“道”の発想だ。多くの日本人が知らず知らずのうちに、「サラリーマン道」とも言うべき生き方に縛られて日々を生きている。これは江戸時代の武士に似ている。武士道も剣道も、みな江戸時代に成立した。手柄を立て、褒美を得る。あるいは戦場で敵を倒す。そういった本来の目的を喪失しても、武士は武士として生き、剣を持たねばならない。そこで行為自体が目的となったわけだ。この話をすると、よくこんな反論をされることがある。「たとえばシリコンバレーでは、アメリカ人は日本人以上に働くではないか」それは半分正しく、半分間違っている。たしかに彼らのなかにはオフィスに寝泊まりし、休日返上で倒れる勢いで働く者もいるが、彼らは上場やストックオプションで億万長者になるために働いている。そして、その目標の成否にかかわらず、その多くは四〇までに引退する。つまり彼らには、「若くして大金を稼ぐ」という、あまりにも明白な動機があるのだ。