二十六歳のシステムエンジニアHさんが我々のもとに相談に訪れたのは、一ヵ月ほど前のことである。彼は百名程の従業員数の独立系ソフトハウスで、プログラムを書きつづける日々を送っていた。「仕事は楽しいんですよ。プログラムを書いていること自体に苦痛はありません。ただ、上司がちょっとねえ……人間的にウマが合わないと言いますか。同じ空間を共有しているだけで、気分が悪くなってしまうんです」Hさんは自分の転職理由について、こう説明した。
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人間関係を理由にして転職を思いつくことは、別段珍しいことではない。大きな会社であれば、人事異動といった解決方法もあるだろうが、Hさんの勤めている会社の規模では、相性の悪い上司と空間を異にするのも難しい。そんなわけで、我々はHさんへの情報提供をはじめた。Hさんに情報提供をしていく上で、我々はHさんの境遇や志向について突っ込んで聞き始めた。「今の上司から離れられればそれでいい」というHさんの希望だったが、だからといってどんな会社でもいい、というわけにはいかない。とりあえず、今どんなスタイルで仕事をしているのか、詳しく聞いてみることにした。「今の仕事ですか?さっき言ったように、仕事内容に不満はないですね。強いてあげれば、残業時間が少々多いことくらいかなあ」「月間の勤務時間って、どれくらいなんですか?」「そうですね……月によって多少ばらつきはありますが……四百五十〜五百時間くらいですかね」「えっ?」「休みなんてほとんどないですし、だいたい朝八時から夜中まで仕事してるんで、計算すればそんなもんだと思いますよ」「……それは、相当しんどいでしょうね」「そうですか?まあ、世の中厳しいですからね、仕方ないですよ。プライベートはないし、ここ数年、昇給もなければ残業代も出ませんけど、遊びに行くヒマがない分、金は貯まりますよ。はっはっはっ……」